私たちの成長とともにあるイラスト。
まるに点々から始まる記号的イラスト
私たちが生まれて初めて描くのは記号的イラストです。
2、3才くらいのちいさな子供は奔放にぐるぐる円を書いたり直線を描いたりすることから始まり、やがて丸の中に丸を書いたり丸から線を生やしたりし始めたりします。
「それは何を描いたの?ママ?」
「うん!」
小さな子はだんだん描く絵に意味を持たせ始め、見たものを描くというより知っているものを描く、もしくは描いたものを知っているものに意味付けし始めます。
幼稚園の子供がノートなどに描くイラストを見て見ると、丸・四角・三角を組み合わせた「車はこう」「木はこう」「女の子はこう」といった、その子(描く子)が〇〇だとわかる記号的イラストです。
写実イラストとは
成長していくうちに、「目に見えるものをそのままリアルに描きたい」「奥行きも表現したい」などの欲求が生まれてきます。しかし多くの人がここで「見ているものをそのまま描くことができない」「描きたいことが描けない」というモヤモヤを経験して絵を描くことから離れていくそうです。
私たちは成長過程でこのように記号的イラストと写実的イラストに接して成長してきました。
記号的イラストを描く
記号イラストは強いて例えると記憶から視覚化したイラストです。
多くの人が共有する、「〇〇といえばこういう形」を表現します。
幼稚園の頃は「自分がわかれば」OKでしたが、みんなに伝わるイラストととして表現を考えます。あるもののイメージを共有するために使うことが多く、みんなが○○とわかるためにはどう描けばいいだろう、という共通認識を推し測ることが必要です。
今は画像検索という便利なツールがあるため、簡単に共通認識を調べることができます。
記号的イラストの使われ方
記号的イラストは「みんなの共通認識」としての表現に優れていますので、幅広く使われています。とくに説明など相手にイメージしほしいことを表現することに適しています。「この部分をわかりやすくするためにイラストを使おう」という時はほとんど記号的イラストを使います。
身近な例としては、トイレのマーク。もし、トイレのマークが記号的なものでなく、女性と男性の写実的なイラストだと、まどろっこしくなりますよね。記号的イラストは抽象表現として見るものの素早い理解に貢献します。
写実イラストを描く
小学校くらいで絵をかく事をやめてしまう人が多いという話を先ほどしました。
写実的に物を見たり書き表すためには記号的イラストのアプローチとは異なり、スケッチやデッサンなど見たままのものをそのまま描写する訓練をします。
「見たものをそのまま描く」というのは案外難しいことです。なぜなら私たちはものごとを視覚認識する時 無意識に重要なものを選んで記憶するため、頭の中で色々なものを省いているそうです。
一体何を省いているのか?
ちょっとピンときませんが、たとえば顔を描いた時、絵が苦手な人は人の顔の場合、目の上の部分が小さく描く傾向があります。目の高さは顔のだいたい中央にきますが、目がもっと上に方に描かれることが多いです。これは、目より上の部分が「重要でない」として省かれて認識されているということです。
他にも、テーブルとイスを描こうとすると、見たままではなく記号的になってしまったり、遠近感がうまく把握できずに歪んでしまったりします。
写実的な描写の訓練として、左脳的働きを抑えつつ見たものを描くということが重要となります。模写するイラストや写真を逆にしてそれを描いたり画面を分割して描いていくなどすると、短期間でも描写能力をのばせるそうです。
左脳的働きとはどういうことでしょうか?左脳は物事を重要でないものを省いたり、物事を記号的に分析して「これはこうだ」と判断し、「見たまま描く」ことを邪魔してしまいます。そのため、写実的に描く場合左脳には少々黙っていてもらう必要があるのです。
写実イラストの使われ方
写実イラストは「臨場感や世界観」を表現するのに優れています。実際には行けない場所、存在しない世界の雰囲気を表現することができ、「今そこにいる・それを見ている」ような雰囲気を味わえます。アニメの背景や小説の挿絵・表紙など、その世界に入り込める力がありますね。また、趣味で人気の水彩画の面白さは、「実際の景色をどう切り抜くか」という試みと、「見たままこんな風に描けた」という達成感も。
まとめ
記号的イラストも写実的イラストもどちらも「イラスト」ですが、そのイラストの描き方の訓練の仕方がちがうこと、また見た時の感じ方が異なるために、それぞれ別の使われ方をしていますね、という話でした。
こちらもどうぞ→イラストを使うメリットと、イラストを使わない方がいい場合は?
参考文献 脳の右側で描け ベティエドワーズ 2013